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「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」を語る

2013.03.12

「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」を語る

〔後編〕東北と東京の連携で新しい農業ビジネスを創出、事業化へ

東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」は新しい時代の新しい仕組みや地域の意義を、農業を中心として生み出すプロジェクトです。東北と東京で2つのカリキュラムを用意し、東北では、農業経営者向けの「農業経営者リーダーズネットワークin東北」を、丸の内朝大学では、初の通年クラスとなる「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」を開設します。 今回は、このプロジェクトを企業としてサポートするキリングループの德田正一さん(写真左から2人目)、外資系企業でのコンサルティング営業の経験を生かし農業の変革に挑む講師の田中進さん(写真右から2人目)に、同じく講師を務め丸の内朝大学プロデューサーでもある古田秘馬(写真右)と丸の内朝大学企画委員会企画委員の井上成(写真左)が話を聞きました。〔前編はこちら


民間だからこそ。丸の内からジャパンクオリティの新モデルを

井上 朝大学でのクラスは、最終的にどのようなことを目指すのでしょうか。
古田 チームでビジネスプランを発表して、実際にサービスなどを作り出し、投資したいというところが出てくるまでを考えています。
田中 農業経営者が抱えている課題を解決して形にしていきます。そこに朝大学のメンバーのノウハウをどんどんつぎ込み、イノベーションを起こしたいと思います。
德田 キリンとしてもこれまで培ってきた人的資源やアライアンスを生かして、さらに支援したいと思います。朝大学や農業経営者とともに汗をかき学びながら、新たな農業のビジネスモデルを創っていきたいですね。
古田 すばらしいビジネスモデルができたら、キリンさんに限らず、多くの企業と連携し、出資や実際のビジネスを構築していただく。今回、そのモデルができるのではないかと思います。
井上 アウトプットしたものが事業化できるとなれば、モチベーションが違ってきます。単なる農業復興を目指したコミュニティではなくビジネスソリューションコミュニティという形にしたいですね。
古田 全く違う産業の人たち同士が集まるので、可能性は大きいと思います。世界的にホスピタリティマネジメントのサービスの体系は作られていますが、そのベースになる食の安全性、トレーサビリティの技術はまだまだできていません。そういうものを日本が先行できるではないでしょうか。ホスピタリティに合わせたトレーサビリティマネジメントのシステムを丸の内に作りたいですね。

〔写真〕2012年秋学期「地域プロデューサークラス三重編」での最終プレゼンの様子。さまざまなバックグランドを持つ受講生が、地域の課題解決を目指し、チームごとにアイデアを出しあった。

井上 ファイナンスの面はどうでしょう。どんなに優れた事業計画を立てても、資金を調達できないということでは上手くいきません。
田中 国の補助金も含めて、実は農業界は恵まれていると思います。資金調達できないのではなくて、施設計画は作れても、どう事業計画を作るのかという事業の組成そのものがなく、場当たり的に出資してくださいというところに問題があるように感じています。その事業が周りの人に認められるものであれば、自ずと多くの支援者が出てくるでしょう。
古田 農業の分野に投資をしたいという企業や人々、仕組みも増えていますが、受け取る側、それを利用する側の準備ができていないという状況を変えていこうとしているところです。
井上 また、女性への期待もありますよね。朝大生の7割は女性。農業的な発想とは違う意見も出てくるのではないでしょうか。
田中 商品開発やデザインなどのマーケティングの側面もそうですが、女性の目線は生産現場の環境改善にも役立つかもしれませんね。
古田 田中さんが経営している農地はすごいんですよ。たとえば、道具ひとつとってもどこに何があるか、直感的にわかる仕組みができている。普通の農家は、納屋に適当に置いてあって、探すだけでも大変だったりします。そういう小さなことも含めて、現場での生産効率を上げるのを徹底しているんです。
田中 環境改善して生産性の高い仕組みを作れば、多くの雇用が生まれます。大手の工場が海外に移った今、地域の若者や、雇用弱者といわれる子育て中であったり子育てを終えた女性を受け入れる場所が必要とされています。農業を通してそうした地域の課題も解決できる、非常に意義のある仕事になると思います。そんなことを皆で学びながら、日本オリジナルのジャパンクオリティの農業ビジネスを作ることを目指したいですね。

〔写真〕田中さんが代表を務めるサラダボウルの農場。農業の問題を解決するために様々な取り組みを行なっている。

古田 これから10年、20年経つと、今までアジアの人件費が安いから成り立っていた産業が勝負できなくなります。そのとき、成熟した農業の地域モデルが完成していれば、逆に海外にも輸出していけるはずです。
德田 コンサルの経験をビジネスとは縁遠かった農業に生かしている田中さんのような受講生が集まり、マーケットサイドの丸の内で、農業復興を考えることがイノベーションにつながるだろうと大きな期待があります。
田中 行政ではなく、民間がこういった取り組みを行うこともに意味があります。これまでも6次産業化を推進するような国の補助制度がいろいろありましたが、必ずしも万全ではありません。国の制度では取り込めないような熱い想いをプロジェクトが持つことが、世の中に何かを生み出す原動力になると思います。BtoBもBtoCもある事業領域が広いキリンさんがサポートしてくださっているのも心強い。さまざまなネットワークを利用しながら、農業復興に向けてこのプロジェクト力強く進むように、4月から東北と丸の内でクラスを運営していきたいと思います。


德田正一(キリン株式会社 CSV推進部)
1985年農林水産省入省。生産局畜産部畜産企画課長、水産庁漁政部企画課長、統計部管理課長、大臣官房地方課長を歴任し、2012年8月から官民人事交流制度によりキリンビール株式会社に交流派遣。現在、キリン株式会社 CSV推進部キリン絆プロジェクト兼企画担当主務。

田中進(農業生産法人・株式会社サラダボウル代表取締役)
山梨県生まれ。1994年(株)東海銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入社。企業の強みを見出す「成功の原理原則」を培い、1999年に外資系生命保険会社に転職。経営者の右腕としてコンサルティング営業を展開したのちに2004年に農業業界へ転身。それまでの知識と経験を活かし、日本の農業の新しいカタチを創りたい!と生産工程管理の徹底から農業経営者の育成まで多岐にわたって活動中。NPO法人農業の学校理事長。

古田秘馬(プロジェクト・デザイナー)
東京都生まれ。慶應義塾大学中退。山梨県・八ヶ岳南麓「日本一の朝プロジェクト」、東京・丸の内「丸の内朝大学」などの数多くの地域プロデュース・企業ブランディングなどを手がける。2009年、農業実験レストラン「六本木農園」を開店。2013年6月、日本の食文化を次世代に継承する“三世代で学べる”レストラン「むかしみらいごはん」を開店予定。日本中の美味しいものを探して1年の半分は旅をしている。株式会社umari代表。

井上成(丸の内朝大学企画委員会企画委員)
エコッツェリア協会専務理事・三菱地所(株)都市事業室副室長。1987年に三菱地所(株)入社、商業ビルの企画開発部門、経営企画部門に所属後、1999年より経済協力開発機構(OECD)パリ事務局に出向、地域開発政策部門のエコノミストとして勤務。2003年より現職。2006年にグッドデザイン賞金賞を受賞した「大手町カフェ」、2007年より環境戦略拠点「エコッツェリア」のプロデューサー。丸の内朝大学企画委員会企画委員を務める。

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