丸の内朝大学

ソーシャルプロジェクトブログ

丸の内朝大学のクラスをきっかけに、受講生同士のネットワークから生まれた、
まち、地域、社会を変えるプロジェクトの活動をレポート!

2015.07.29

Theatre at Dawn (シアター・アット・ドーン)

Dawn ステーション #10

劇場に「へぇ~」の声、響きやまず。
プロの技に触れて、ミュージカルがもっと好きになった
『サンセット大通り』バックステージツアー

演劇ライター/栗原晶子

夜明けの劇場Theatre at Dawn(シアター・アット・ドーン)の夏休み企画、「ミュージカル牧場」の第二弾は、ミュージカル『サンセット大通り』の観劇&バックステージツアー。7月12日(日)、赤坂ACTシアターでのマチネ公演を観劇した後、いよいよバックステージツアーがスタート!

ほんの数分前まで満席だった客席。

今はもう誰もいない空の客席は、なんだか不思議でしかも神聖。

中央の座席に参加者36名が座るとまもなく、バックステージツアーのナビゲーター、『サンセット大通り』の音楽監督・塩田明弘さんの登場です。

この作品では指揮も務めている塩田さん。丸の内朝大学ミュージカル観劇クラスのメイン講師を担当されていたので「はじめまして」じゃない方もチラホラ。アットホームな雰囲気でお話をはじめてくださいました。

とびきりゴージャスな理由

『サンセット大通り』の音楽は、ミュージカル界の巨匠・アンドリュー・ロイド=ウェバー氏が手がけています。大女優ノーマ・デズモンドがプライドと輝きを持って歌う「♪With One Look」や、ノーマと出会い思いがけない運命を生きる脚本家ジョー・ギリスが心の叫びを歌う「♪Sunset Boulevard」など、魅力的でしかも難しい曲揃いの作品。

塩田さんは、2014年の『ラブ・ネバー・ダイ』上演時に、来日されたアンドリューさんご本人と直接お話しをして、この作品について「とびきりゴージャスに!」とアドバイスを受けたのだそう。確かに、大女優ノーマの存在感も、舞台美術も、今回の出演者もとびきりゴージャスだし、音楽もゴージャスでした。

でも実は音楽はたった13人のオーケストラで構成されているのが、今回の『サンセット大通り』。「30人くらいに聞こえたでしょ?」とお茶目に笑う塩田さん。通常、ミュージカルの場合、オーケストラピットは舞台と客席の間にあることが多いですが、今作は舞台後方に位置していて、塩田さんは演じる役者さんの動きを終始モニターで見ながら指揮をするのだそう。あのゴージャスな音楽の裏には、そんなプロの技と努力が潜んでいたのですね。

さて、さっそくバックステージツアーに出発です。

まずは作品の進行、調整、すべてを演出の意図のもと仕切る舞台監督 二瓶剛雄さんにご挨拶。「この方なくして舞台は成立しません!」というご紹介を聞いて、参加者みな、熱いリスペクトの拍手です。

 

意外!? スゴイ!! カッコイイ!

舞台上手(かみて)で目に入るのは、小さな箱のような部屋。これは早替え小屋と呼ばれるもので、ここで役者さんは、衣裳チェンジをするそうです。

いきなりですが、ここで、塩田さんクイズ!

「世界一早替えが出来る団体はどこだ?」

正解は、そう、あの昨年100周年を迎えた歌劇団とのこと。その速さたるや、相当なものだそうです。今作ではノーマ役の濱田めぐみさん、安蘭けいさんが舞台に登場する度に、華やかで、美しいドレスを纏っていますから、この早替え小屋が袖では大活躍していたわけですね。

上手には、作品に登場した小道具の数々も置かれていました。「あ、意外と小さいんだね」とか、「これってあのシーンの……」と観たばかりの参加者たちのテンションが上がります。

大きな扇風機は、袖からスモークを巻き上げたり、送り込むための装置。それに照明が当たって幻想的なシーンを作り出すのだそう。

へぇ~、舞台ってやっぱり総合芸術なんだ~。

舞台美術には、スタッフの「人力」が欠かせません。その証拠として教えていただいたのは、床に刻まれた溝。これは、セットを真っ直ぐ間違いなく移動させるためのガイドの溝なのだそう。スタッフの皆さんは音楽に合わせて、舞台監督のきっかけ通りに真っ暗な中でセットを移動します。白いガムテープなど、細かい印はそのためです。

へぇ~、舞台ってやっぱりプロたちの技によって作られているんだ~。

つづいて舞台の上手側に置かれていたノーマ邸のソファーセットを間近で拝見。

ノーマ邸にもぐりこんだジョーがいきなり衝撃を受けるあのシーンとか、ノーマとジョーとのあのシーンなど、とにかく登場回数の多いソファーです。

壁には25歳で無声映画の女王として輝きを放っていた若き日のノーマのポートレートがたくさん飾られています。

と、よく見ると、それは濱田めぐみさんのお顔です。Wキャストで安蘭けいさんがノーマを演じる回は、これらがすべて安蘭さんのものに替えられるのだと聞くと、一同「おぉ~!!」と感嘆の声。これから観る方は、客席からオペラグラスで要チェック、ですね。

客席で見るよりも意外に狭いと感じるノーマ邸。上や脇から当てる照明で遠近感を出すことで、客席の目には広々とした空間に見せることができるのだそう。

 

観劇の楽しみ、広がる、つながる

今度は、舞台で使用している「盆」と呼ばれる回転床を実際に回していただきました。舞台中央はノーマ邸の階段から、ジョーとベティが歌う階段の踊り場へ。盆の操作や音楽の長さ(秒数)など、すべてが緻密に計算され創り上げられているからこそ、観客はスムーズに場面転換を受け入れることができるわけです。

塩田さんの「いらっしゃ~い!」の声でブイーンと目の前に表れたのが、ジョーのブルーの車。劇中でもスピード感がありましたが、実際もなかなかのスピードです。

舞台脇にはもう一台、マックスが運転するノーマの車が停まっています。物語の中でも重要な役割を担う彼女所有の高級車。近くで見ると、ピカピカでゴージャス。シートは豹柄でした!

舞台の上手から下手、表から裏までぐるりと見せていただいたバックステージツアー。最後は残ってくださっていた舞台部のみなさんにご挨拶&拍手を贈り、終了しました。

ナビゲートいただいた塩田さんからは、こんなメッセージをいただきました。

「この方々(舞台部をはじめとするスタッフのみなさん)がいるから舞台は出来ています。次に観劇するときは、作品そのものはもちろん、この舞台はどんな人たちの力で生み出されているのかにも注目してみると、より観劇の楽しみが深まるはず。」

大きくうなづきながら、次のミュージカル観劇はいつだっけ? と自分のスケジュール帳を頭に思い浮かべた人がどれだけいたことでしょう。

これからは、セットの細部や公演プログラムのスタッフクレジットにも注目ですね!

 

塩田さん、関係者の皆さま、楽しい時間をありがとうございました!

——————————-

演劇ライター/栗原晶子

イベント情報誌やフリーマガジンの編集者を経て、フリーの編集&ライターに。王道ストレートプレイからミュージカル、コントまで、旬の生モノを発信する劇空間を求める日々。主な執筆に、『Golden Songs』公演プログラム、ミュージカル『ファントム』稽古場レポート、『ロミオ&ジュリエット』アフタートークショーレポートなどがある。また、整理収納アドバイザーとして、auスマートパス[住まい]にて片づけ・収納コラムを連載中。

観劇blog 『拝啓、ステージの神様』
イラストエッセイブログ『食べ頃シネマ』

※「ソーシャルプロジェクトブログ」に記載された意見や表現などは、各記事の執筆者個人の意見・表現であり、
丸の内朝大学企画委員会によるものではありません。